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第9回DAIHATSU日本障がい者バドミントン選手権大会

若手もベテランも集結! パラバドミントンの日本一決定戦

 国内のパラバドミントンの頂点を目指し争う「第9回DAIHATSU日本障がい者バドミントン選手権大会」が1月27日から2日間にわたり、町田市立総合体育館で開催された。競技歴の浅い若手選手から東京2020パラリンピック競技大会(以下、東京2020大会)の金メダリストまで、約80人がエントリー。知的障がいクラスも開かれたほか、立位のSU5+は障がいの枠を超えて、上肢・聴覚障がいなど混合で実施された。
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タレントぞろいの男子WH1は西村が初制覇

 車いす男子WH1のシングルスでは、過去3大会で3位が最高成績だった西村啓汰(にしむらけいた)選手(東京都)が新チャンピオンの座に就いた。西村選手は準決勝で4度の優勝を誇る長島理(ながしまおさむ)選手(東京都)を下して、初の決勝に進出。決勝戦対戦相手の大山簾織(おおやまれお)選手は、大会2連覇中の村山浩(むらやまひろし)選手を準決勝で破り勢いに乗っていたが、15-21、22-20、21-17のフルゲームの末、西村選手が勝利した。初めて頂点に立った西村選手は、「優勝を目指して意気込んでいた。勝手に、にやけてしまうくらい、すごく嬉しい」と笑顔を見せた。
 一方の大山選手は、昨年のクラス分けでWH2から、より障がいが重いWH1と判定され、11月のヒューリック・ダイハツ JAPAN パラバドミントン国際大会2023以降はWH1で戦っている。「同じ車いすでもクラスが変わるとラリーや展開の速さが変わる。まだ適応しきれていないが、もっと自分でゲームメークできるようになって、しっかり勝ち切れるようになりたい」と話し、前を向いた。
 車いす男子WH2は、東京2020大会金メダリストの梶原大暉(かじわらだいき)選手(福岡県)が松本卓巳(まつもとたくみ)選手(千葉県)をストレートで下し、大会4連覇を果たした。また、車いす男子ダブルスWH1-WH2は、東京2020大会銅メダルの村山・梶原組が4組の総当たり戦で全勝し、優勝した。


大混戦の男子WH1を粘りのプレーで制した西村選手

ペアを組んだのは約5カ月ぶりながら強さを見せた村山(左)・梶原組

男子SL3は藤原が前人未踏の8連覇

 下肢障がい男子SL3は8人がエントリー。シングルス決勝は、第1回大会から連続して藤原大輔(ふじはらだいすけ)選手(茨城県)と末永敏明(すえながとしあき)選手(神奈川県)のカードに。試合は藤原選手が初めてゲームを落としたものの、第3ゲームで6点差をひっくり返して逆転勝ちをおさめ、新型コロナで中止になった第7回大会を除いて大会8連覇を達成した。また、下肢障がいSL4は中村海斗(なかむらかいと)選手(東京都)が2連覇を遂げた。下肢障がい男子ダブルスSL3-SL4は、元日本代表コンビの広井拓(ひろいたく)選手(東京都)と末永選手のペアが、終始安定したプレーを披露し5度目の優勝を飾った。

藤原選手は第1回大会からの連続優勝記録を「8」に伸ばした

 低身長男子SH6のシングルスは、このクラスの第一人者である畠山洋平(はたけやまようへい)選手(東京都)が若手選手の挑戦を退け、全勝で優勝した。低身長クラスは男女とも競技者数が少なく、前回大会は男女混合で実施していたが、今大会は男子5人、女子2人がエントリーして男女それぞれで試合が成立。畠山選手は、「新しい選手が増えて嬉しい」と目を細めた。SH6のダブルスは男女混合となり、畠山選手は女子の小学生プレーヤー・曽田菜々子(そたななこ)選手(東京都)と組み、男子ペアを破って優勝。2冠を達成した。

男女混合のSH6ダブルスは畠山選手(左から3人目)と曽田選手(右から3人目)のペアが制した

男子SU5+は聴覚障がいの選手も活躍

 立位のSU5+は、上肢障がいのSU5クラスに、聴覚障がいや精神・内部障がいなどの選手が加わる日本選手権のみに設けられたクラスだ。今大会の男子SU5+には、2025年に東京で開催される夏季デフリンピック競技大会(以下、東京2025デフリンピック)出場を目指す聴覚障がいの選手3人が参戦し、活躍を見せた。

 シングルスでは、第6回大会で3位に入った馬場大地(ばばだいち)選手(東京都)が、決勝トーナメントで元日本代表の浦哲雄(うらてつお)選手(東京都)や正垣源(しょうがきげん)選手(東京都)ら上肢障がいの強敵を次々と下し、初めて決勝に進出。決勝では、第1シードで上肢障がいの今井大湧(いまいたいよう)選手(神奈川県)に10-21、12-21とストレートで敗れたものの、存在感を示した。試合後、馬場選手は「今井選手とのレベルの差を痛感した。その気持ちを忘れないように、デフリンピック出場を目指したい」と、力強く語った。

 5組がエントリーしたSU5+男子ダブルスでは、聴覚障がいの太田歩(おおたあゆむ)選手(兵庫県)・沼倉昌明(ぬまくらまさあき)選手(新潟県)のペアが4戦全勝と強さを見せ、頂点に立った。太田選手は「他の障がいの選手と対戦する機会は少なく、シャトルを打つリズムや感覚が違うので苦しめられたけれど、こういうプレーもあるのかととても勉強になった」と振り返り、沼倉選手も「クラスや障がいの有無に関係なく、一緒にプレーすることはとても意義があることだと思う」と、言葉に力を込めた。

 太田選手と沼倉選手は、2022年にブラジルで行われた第24回夏季デフリンピック競技大会の混合団体戦でもダブルスでペアを組んで日本チームの銀メダル獲得に貢献するなど実績を残しており、「東京大会でも代表に選ばれたら、団体戦と個人戦の両方で金メダルを獲りたい」と声をそろえる。太田選手はブラジルの大会後に引退予定だったが、東京2025デフリンピックの開催決定の報を受け、現役続行を決めたといい、「東京大会では、デフリンピックや聞こえない世界について、多くの人が考える機会になれば」と語った。


初めて決勝に進出し、今井選手と対戦した馬場選手(左から2人目)

東京2025デフリンピックでも活躍が期待される太田(右)・沼倉組

世界女王の里見は友寄に勝利も「新たな課題が見えた」

 車いす女子WH1は2人がエントリー。東京2020大会金メダリストの里見紗李奈(さとみさりな)選手(千葉県)が、高校2年の友寄星名(ともよせせな)選手(東京都)をストレートで下した。里見選手を尊敬していると話す友寄選手は、「里見選手は相手の体勢を見ながら打つ球を使い分けていて本当にすごいと思った。自分もできるようになりたい」と振り返った。里見選手もまた、友寄選手の成長を実感したといい、「友寄選手はサーブのタイミングが読みづらかった。対戦経験が少ない選手とやることで新たな課題が出てくると感じたし、得るものがあった」と話した。
 下肢障がい女子SL3は、普段はミックスダブルスに専念する伊藤則子(いとうのりこ)選手(愛知県)がシングルスでも強さを発揮して全勝優勝。下肢障がい女子SL4は世界ランキングで上位につける藤野遼(ふじのはるか)選手(福岡県)が強さを見せた。女子SU5+は、上肢障がいの4人がエントリー。総当たり戦を行い、前回大会2位の杉野明子(すぎのあきこ)選手(千葉県)が全勝優勝を果たした。
 2人が参加した低身長女子SH6は、杉本沙弥佳(すぎもとさやか)選手(静岡県)が制した。杉本選手は、「来年も優勝を目指して頑張りたい」と笑顔を見せた。


表彰式で笑顔を見せる里見選手(右)と友寄選手

「ミックスダブルスの経験を活かして前衛のプッシュなどは積極的に決められた」と話す伊藤選手

ID7は中学1年の新星・髙橋がツートップを破って初優勝

 知的障がい男子ID7は最多の12人がエントリー。シングルスでは、予選リーグで前回チャンピオンの田中和弥(たなかかずや)選手(東京都)を下した中学1年の髙橋元太(たかはしげんた)選手が、続く決勝トーナメントでも快進撃を見せ、決勝では5度の優勝経験がある中野林太郎(なかのりんたろう)選手(長野県)を21-16、18-21、21-12のフルゲームで下した。幼稚園生の時にバドミントンを始め、現在は中学の部活動で練習しているという髙橋選手。先輩2人を破る大金星を挙げて初優勝したことについては、「最初は自信がなかったけれど、やればできると思って気持ちを強く持って戦えた」と振り返り、「最後まで足が動いていた。練習の成果が出た」と笑顔を見せた。同ダブルスは、中野・田中組が強さを発揮し、4度目の優勝を飾った。

 また、6人がエントリーした知的障がい女子ID7は、決勝で中学3年の千葉(ちば)すず選手(岩手県)が花澤杏奈(はなざわあんな)選手(千葉県)をストレートで下した。同ダブルスで千葉選手は花澤選手と組んで全勝し、2冠を達成した。


髙橋選手は格上選手を次々と撃破して初優勝を飾った

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(取材・文/MA SPORTS、撮影/植原義晴)