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パラスポーツインタビュー詳細

牛尾 洋人さん(一般社団法人日本デフビーチバレーボール協会)

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プロフィール

名 前

牛尾 洋人(うしお ひろひと)

生年月日

1974年8月22日

出身地

兵庫県

所 属

一般社団法人日本デフビーチバレーボール協会

 砂の上で繰り広げられるビーチバレーボールを、視線や合図でコミュニケーションを取りながらプレーする「デフビーチバレーボール」。この競技を、日本で長年支えてきたのが一般社団法人日本デフビーチバレーボール協会の牛尾洋人理事長。ビーチバレーボール選手としての経験を生かし、指導者・運営者として競技の普及と発展に尽力してきました。今回は牛尾さんに、デフビーチバレーボールの魅力やこれまでの歩み、そして第25回夏季デフリンピック競技大会 東京2025(以下、東京2025デフリンピック大会)を終え、いま見据える未来についてお話を伺いました。

牛尾さんはプロのビーチバレーボール選手だったそうですね。

 私は兵庫県出身で、中学生から大学まで6人制バレーボールをしていました。大学卒業後に就職した企業で9人制女子チームのコーチをしていたのですが、もう一度プレーしたいという気持ちが出てきて、ビーチバレーで競技復帰しました。バレーボールの国内トップリーグで活躍して6人制の日本代表にも選ばれた経歴のある弟もビーチに転向して、兄弟でペアを組んでプロとして活動していました。

デフビーチバレーボールと関わるようになったきっかけを教えてください。

 ビーチバレーボールを通じた社会貢献として、弟と2人で小さな大会を開催したりしていましたが、我々にしかできない独自の活動をしてみたいと考えていたとき、日本デフバレーボール協会のセクションのひとつにデフビーチバレーボールがあることを知りました。そこで私の方から日本デフバレーボール協会にアプローチをしました。そのときには大会を開催できなかったのですが、その後、協会の理事の方から声をかけていただいて、日本代表の監督を引き受けることになりました。それが2011年です。監督として、2013年ソフィア(ブルガリア)大会、2017年サムスン(トルコ)大会、2022年カシアスドスル(ブラジル)大会に参加しています。

牛尾さんは、一般社団法人日本デフビーチバレーボール協会(以下、DBVA)の立ち上げメンバーで、代表理事もされています。

 当初は日本デフバレーボール協会内でビーチバレー競技を推進していましたが、インドアバレーとは活動形態や選手の強化方法が大きく異なることから、より専門性の高い運営体制が求められていました。

 そこで、国際大会への派遣事業や競技力の向上を加速させるため、協会をわけて運営をしたほうがいいのではないかということになり、2017年9月に一般社団法人日本デフビーチバレーボール協会(DBVA)を設立しました。協会の本部は大分市に置いています。パラスポーツに関わるみなさんがご存じのように、大分は“日本のパラリンピックの父”ともいわれる中村裕(なかむらゆたか)先生(※)のお膝元で、自治体も街の人々もパラスポーツに熱意や理解があります。デフビーチバレーボールもこの大分から日本、世界へと広めていきたいと考えました。


※中村 裕 先生
日本の医学博士。1964年東京パラリンピックの開催に尽力し、日本初の身体障害者福祉工場「太陽の家」を設立。障害者の自立と社会復帰に生涯を捧げた。
(出典:社会福祉法人 太陽の家 公式サイト、別府市「中村裕博士の紹介」)

デフビーチバレーボールならではの面白さや、みどころはどんなところでしょうか?

 デフスポーツに共通していることだと思いますが、一般のビーチバレーボールと基本的な競技ルールは同じです。ただ耳が聞こえない、聞こえにくいということで、レフリーが止めてもプレーが続いてしまっているときなどは、レフリーがネットを揺らして視覚的に伝えます。

 試合中、ラリーが続く中では手話が使えないので、それぞれのペアが工夫をして意思疎通を図っています。ペアのコミュニケーションや相手との駆け引きに注目すると、彼らのやっていることのレベルの高さがわかってもらえると思います。

指導者として、どうやって選手とコミュニケーションをとっていますか?

 監督になって最初にやったのは、自治体のやっている手話教室に通うことでした。今では他のデフ競技団体の方から「手話がうまいですね」とお世辞を言われることもありますが、それでも完璧なコミュニケーションを取ることはできません。聞き取りができる選手が手話通訳してくれることもありますが、それが選手の負担になることもあるので、合宿などではできるだけ手話通訳の方に入っていただくようにしています。コミュニケーションのコツは、お互いに分かったふりをしないこと、聞き返しやすい雰囲気づくりだと思います。

昨年開催された、東京2025デフリンピックでは、どのような役割で活動されていたのでしょうか?

 デフビーチバレーボール競技を担当する大会側スタッフとして運営に携わりました。デフリンピックの運営においては、各競技のDeaf Representative(直訳:ろう者代表)を開催国から選出するというルールがあって、DBVAから出していたので私は競技や運営全般のサポートを担いました。これまで様々な大会で顔見知りになった各国の監督やスタッフが、「牛尾が監督じゃないのか!?」って驚いていましたけど(笑)、彼らにとっても私が運営側にいたことがとてもやりやすかったようでした。

ビーチバレーボール含め東京大会は素晴らしくオーガナイズされた大会だと評価されているようですね。

 参加した各国の選手・関係者はみなさん喜んでいましたね。やはりたくさんの観客の前でプレーできるという喜びは大きかったと思います。ビーチバレーボールの会場も約500の客席が埋まって、立ち見が出て、入れなかった方までいました。

 私が参加した過去の3大会では、会場のレギュレーションや選手のゾーニング、バス移動など現地に入ってから様々な問題が起こりました。今回の東京では選手が競技に集中する環境が提供できていたと思います。

日本選手も大健闘してくれました。

 東京大会では男子が4位、女子が5位タイに入りました。デフリンピックでは過去最高順位が9位でしたので、とてもいい結果が残せたと評価しています。やはり自国開催が追い風になりました。多くの観客のみなさんの声援が、選手に力を与えてくれましたね。

東京でデフリンピックを開催した影響はどんなところに感じますか?

 デフスポーツの認知度が、2023年まで10%台だったのが、70%台に上がったという東京都の調査もありました。我々は何年も前から学校訪問をして、デフスポーツの普及やデフビーチバレーボール体験会をやっているのですが、学校での子どもたちの反応からもそれを実感します。選手や私たちスタッフも「観たよ!」などと声をかけてもらうことが増えました。

それも東京2025デフリンピックの大きなレガシーですね。

 そうです。でも本当に重要なのはデフリンピック開催後のこの熱が冷めないうちに、もっと多くの企業や団体、ファンを巻き込んでどれだけ大きな流れが作れるかということだと思います。選手の強化、スポンサー獲得のための活動、組織づくり、スタッフの育成…優先順位をつけずにコミットしていきたいと思っています。

具体的に動きたいと考えていることはありますか?

 ひとつは世界選手権の誘致です。各国の関係者とも良好な関係が築けているので、東京の熱が冷めないうちに実現させたいと思います。東京2025デフリンピックは海外からも大成功と高く評価されていますが、それは過去の大会と比較してという面もあります。東京2020オリンピック・パラリンピックを開催した日本ですから、そこはオリンピック・パラリンピックを基準にして、デフスポーツの大会運営のレベルをもっと上げられると思います。

 もうひとつは私たちDBVAが中心となって、アジアのデフビーチバレーボール協会を立ち上げたい。アジアはデフビーチバレーボールをやっている国が少ないので、まずは組織を作って普及させたいです。アジア大会を定期的に持ち回りで開催できるようになれば、アジアのレベルを全体的に上げていけるはずです。

デフビーチバレーボールを観に行ける国内大会を教えてください。

 2026年は3つの大会を予定しています。7月には大分での国際親善大会を開催します。この大会は大分駅前にある、街の中心部の公園に砂を運び込んで特別にコートを作ってやっています。海外からのチームを招待してやりますので、毎回、盛り上がっています。そして10月には東京・大田区の大森ふるさとの浜辺公園で全日本選手権を開催します。デフリンピックの会場でもあった場所です。もう一つは3月に開催した座位ビーチバレーボール大会の第2回大会です。今回はパラ・デフの両団体による共催として位置付けたいと考えています。3大会それぞれ雰囲気も違いますので、ぜひたくさんの方に観戦に来ていただきたいと思います。

大分駅前で行われた「第8回デフビーチバレーボール国際親善大会in大分」の様子
(写真提供:一般社団法人日本デフビーチバレーボール協会)

興味を持った一般の方が、デフビーチバレーボールに関わるにはどのような形がありますか?

 私たちの組織は小さく、まだまだ人が足りていません。バレーボールやビーチバレーボール経験者であれば現場のスタッフ、手話ができる方は手話通訳など、得意な分野を活かしたいろいろな関わり方ができます。毎年東京で実施している国内大会では100名くらいのボランティアさんがサポートをしてくれています。会場で選手に声援を送っていただくのも大歓迎です。

 手話ができないとか、スポーツ経験がないとか考えないで、まず私たちと繋がっていただきたいです。

〇2026年大会スケジュール

日付 大会名 会場
3月7日 座位ビーチバレーボール大会2026
※DBVA・JPVA共催/日本初のパラ・デフ混合形式
田ノ浦ビーチ(大分県)
7月 デフビーチバレーボール国際親善大会 in 大分 大分駅前・祝祭の広場(大分県)
10月 全日本デフビーチバレーボール選手権 大森ふるさとの浜辺公園(東京都)

※第2回座位ビーチバレーボール大会は2026年中に開催予定

※各大会の情報は一般社団法人日本デフビーチバレーボール協会(DBVA)の公式サイト(https://japanbeach.jp/)でご確認ください。

(取材・文/有限会社エックスワン)