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影山 寛仁さん(CPサッカー)

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プロフィール

名 前

影山 寛仁(かげやま ひろと)

生年月日

2006年8月11日

出身地

東京都

所 属

日本大学/所属チーム: エスペランサ

 「CP」とは英語の「Cerebral(脳性の)」「Palsy(まひ)」の略で、脳性まひを意味し、「CPサッカー」は脳性まひのある人を対象とする7人制のサッカーのことです。大学1年生の影山寛仁選手は2023年に初めてCPサッカー日本代表に選出され、国際大会でも活躍しています。CPサッカーとの出会いや競技の魅力、目標などについてお話を伺いました。

障害について教えてください。

 生まれつき、体の左側にまひがあります。手は結構、障害の程度が重いですが、健常の方が両手を使って生きていくように、自分は左まひとして暮らしてきたので、それほど苦労は感じません。足のまひは比較的軽いですが、右足に比べるとボールをうまく蹴れないので、左足を軸にして右足で蹴っています。長年、そうしてプレーしてきたので、バランス感覚などは問題ありませんが、左足で立っていてぶつかられると踏ん張りが利きにくいところはあります。

サッカーを始めたのはいつですか?

 幼稚園のときに、一般のサッカーを地元のスポーツ少年団で体験させてもらって、『楽しいな』と思って始めました。でも、その頃はテレビゲームも好きだったので、本格的に取り組むようになったのは中学生になってからです。クラブチームに入ったら練習が週6日もあって、自然とゲームの時間が減ってサッカーに夢中になっていきました。

 足が速かったこともあって、ポジションは左ウィングを任されました。ただ、他の選手は健常者で、両手両足がしっかり使えているなか、自分は苦手な左足のほうにボールがくると蹴れないこともあって、悔しい思いもしました。

 でも、健常者のなかで高い強度で練習してきたから成長でき、今の自分があると思っています。気持ちに余裕が生まれたというか、今は楽にプレーできているように思います。

サッカーとの出会いを教えてください。

 CPサッカーを知ったのは中学2年生の時です。練習試合後に相手チームの監督さんから、「CPサッカー知ってる? 代表に来ない?」と声をかけていただきました。その方はCPサッカー日本代表のゴールキーパーコーチだったのです。

 「代表に」と言われて、すごくワクワクしました。すぐにCPサッカーについて調べて、高校1年生からエスペランサというチームに入りました。全国大会の優勝チームだと知って、やるなら上手いチームがいいなと思って決めました。

大きな出会いでしたね。11人制サッカーよりも少しピッチが小さい以外にCPサッカーにはどんな特徴がありますか。

 CPサッカーにはオフサイドがなく、スローインは下から転がすように投げ入れます。また、選手はまひの程度によって重いほうからFT1、FT2、FT3と3クラスに分かれ、試合ではいちばん重いFT1の選手が1人以上ピッチに入らなければならず、逆にまひの軽いFT3の選手は1人までというルールがあります。自分はFT2です。

実際にプレーしてみて、CPサッカーについてどう感じましたか?

 まず、脳性まひの選手が「こんなにいるんだ」と驚きました。それと、はじめの頃は、「この人はどっち側にまひがあるんだろう」「ボールをどっち側に出せばいいかな」と分からなくて苦労しました。健常者のチームでは相手にボールを出すことだけを意識すればよかったのですが、CPサッカーでは人によってまひの種類や重さが違うので、メンバーの特徴に合わせてプレーすることが大事です。それが難しさであり、この競技の魅力でもあると思っています。

相手チームの選手の特徴を事前に調べて戦術に活かすこともありますか?

 それぞれの選手のまひのある足を狙ったり、まひの重いFT1の選手やその選手がいるサイドを使って攻めるようなことはよくあります。だから、うちのチームではまひの軽いFT3の選手を後ろに置いてカバーしてバランスをとっています。チームワークが大事になってきます。

目標としている大会はありますか?

 国内では毎年、クラブチーム日本一を決める全日本選手権が岐阜市で行われています。そこに向けて、毎週日曜日に集まって、ゲーム形式メインで練習しています。うちのチームには日本代表メンバーも多いので、高い強度でバチバチにやっています。

 チームでの今のポジションは左ハーフで、めっちゃ走っています。チームには10代は僕ともう1人だけで、多いのは年上の30歳手前の人たち。でも、僕は日本代表でもあるので、みんなを引っ張っていくという意識を持って、どれだけみんなを活せるかを考えながらプレーしています。

エスペランサに入って4年目ですが、チームを引っ張るぞという意識になったのはどうしてですか?

 高校2年生の時に初めて日本代表に選ばれて、すぐにアジア・オセアニア選手権に出場しました。見える世界が変わったことで、意識も変わっていきました。

 海外の選手は体が大きくて、日本は小柄なのでアジリティ(敏捷性)などで対応しなければなりません。とくに、ヨーロッパのチームはでかくて強くて速くてうまいみたいな選手が多いです。運動量や基礎技術の高さなどチームのベースが高いチームも多いです。戦術もいろいろで、例えば、今世界で1番強いイランはFT3の選手をワンバック(*)で回して、FT1の選手はゴールキーパーや前線のフォワードで使われたりしていました。他に、ディフェンスのセンターバックがパスをできるだけ回して、FT1の選手を疲れさせるといった戦術をとるチームもありました。

(*:ディフェンダーを一人だけ後方に配置する守備陣形)

体格のいい海外選手に負けないために取り組んでいることはありますか?

 小さくても相手に負けない体づくりが大事だと思ってランニングをしたり、大学にあるトレーニングジムで体幹を中心に鍛えたりしています。技術面ではSNSにアップされているサッカー選手の動画をいっぱい見てトレーニング方法を参考にしたりしています。今後はフェイントやボールタッチの練習などもやっていきたいです。

 それから、今年から大学生になり、スポーツ科学部で学んでいます。まだ1年生なので一般教養が多いですが、2年生から専門も増えるので、コーチングを学びたいです。自分のトレーニングに活かせるのではと思うからです。将来、コーチをやってみたい気持ちもあります。

影山さんの今の強みと、代表チームでの役割を教えてください。

 強みは足が速いことや、長く健常者とプレーしてきたので国内では体の強さも特徴だと思います。そういう良さを国際大会でも活かしていきたいです。役割は足の速さを活かして走り回ること。攻撃に参加して、守備になったらすぐに戻ってと、ピッチ内をシャトルランのように行ったり来たりしています。自分に与えられた役割を全うしながら、チームの力を引き出すために最適な選択をすることも意識しています。

これまでで印象に残っている試合やプレーはありますか?

 2年前に初めて出場したアジア・オセアニア選手権でのタイとの3位決定戦です。日本が1-0でリードして後半のアディショナルタイムに入ってから、僕がダメ押しの2点目を決めました。相手選手よりも速く走れたのでルーズボールが取れて、そのままシュートしました。自分の特徴が出たなって思っています。その後、味方がもう1点を取って3-0で勝ったので嬉しかったです。

初めての国際大会のメダルマッチで得点。それは印象深いですね。CPサッカーは2016年大会を最後にパラリンピックの正式競技から外れ、今は採用復帰を目指し活動中と聞いています。他に国際大会にはどのような大会がありますか?

 今はワールドカップが最高峰で、世界ランキング上位16カ国が出場でき、それ以下のチームが出場する世界選手権もあります。アジア・オセアニア選手権など各大陸選手権はワールドカップの予選大会を兼ねています。

2023年以降の影山さんの国際大会経験についても教えてください。

 2024年はワールドカップに出場しましたが、1勝もできず15位でした。もったいないミスで失点したり、本当に悔しかったです。2025年は11月に、2回目のアジア・オセアニア選手権に出場しました。グループリーグ敗退で決勝トーナメントには進めず、8チーム中5位でした。悔しかったですが、チームとしてできたこと、できなかったことが明瞭化されたので、まだ成長できると感じました。個人的にもワールドカップより自分の強みを出せました。しっかり走り、体を張り、相手へ仕掛ける回数やシュート本数も増やすことができました。もちろん外国選手と比べて、できない部分もありました。それを自己分析して成長につなげ、次はメダルを獲れるようにしっかりトレーニングしたいです。

いろいろ学ぶ点の多い貴重なステップの大会だったようですね。選手として理想とする姿はありますか?

 「CPサッカーといえば、影山」といわれるような、CPサッカーの表紙になりたいです。シュートを決めたり、プレーで魅力を届けられたりできる選手になりたいです。

「CPサッカーのシンボルとして顔となる選手」でしょうか。力強いですね! では最後に、CPサッカーに興味を持っている人たちにメッセージをお願いします。

 CPサッカーは選手それぞれ異なるまひがあって、それでも頑張ってプレーしています。「自分にも何かできるかも」と思ってもらえたら嬉しいし、可能性を秘めているスポーツだと思います。自分はサッカーを始めた頃、『サッカー選手になりたい』と思いながらも、障害があるので現実的には考えられませんでした。でも、CPサッカーと出会って日本代表に選ばれて、夢は叶ったかなと思います。もし興味を感じている人がいたら、ぜひ一緒にやりましょう。

(取材・文/星野恭子、撮影/有限会社エックスワン)